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20代カップルが受けてみた!独身、カップルも知っておきたい、いま話題の「プレコンセプションケア」って?

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晩婚化や出産年齢の高齢化にともない、不妊検査や不妊治療を受けるカップルが増加しています。2022年4月1日からは一部の不妊治療も公的医療保険の対象となりましたが、いまだ金銭的かつ精神的·身体的な負担が大きいもの。そのような状況下でいま注目されているのが、厚生労働省も推進する「プレコンセプションケア」です。今回は、独身のうちから知っておきたいプレコンセプションケアについて詳しく解説します。

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コラムサマリ

-この記事のまとめ
 1.そもそも「プレコンセプションケア」とは?
 2. プレコンセプションケアの目的とは?
   2-1. どんなことが母体のリスク因子になる?
   2-2. 未来の自分に向けて、プレコンセプションケアをしていこう
 3.自分の体、生活習慣を見直す「プレコンセプションケア」のチェック項目
   3-1. 食生活を確認し、適正な体重を維持
   3-2.慢性疾患の確認、改善
   3-3. 定期的な健康診断
   3-4. ライフスタイルの現状を確認し、改善
   3-5. タバコ、アルコール、薬剤などを節制
 4. カップルで話したい!自宅でできる男性用&女性用プレコン·チェックシート
   4-1. 女性用プレコン·チェックシート(国立成育医療研究センターホームページより)
   4-2. 男性用プレコン·チェックシート(国立成育医療研究センターホームページより)
 5. 20代カップルがプレコンセプションチェックを初体験! 
   5-1. やってみた感想:女性側(薬剤師·26歳)
   5-2. やってみた感想:男性側(会社員·26歳)
 6. 未来のために「プレコンセプションケア」を知ろう

本文

そもそも「プレコンセプションケア」とは?


厚生労働省も推進していることで少しずつ認知が広まっているものの、まだ世間には深く浸透していない「プレコンセプションケア」。まずは、詳しい意味からチェックしていきましょう。

プレコンセプションケアは、「将来的に妊娠を考えている女性やカップルが自分たちの生活や健康と向き合い、健やかな生活習慣を身につけること」を指す言葉です。英語で受胎を表す「Conception(コンセプション)」に、~の前を意味する「Pre」が付いています。

プレコンセプションケアの目的とは?

では、なぜプレコンセプションケアが近年注目されているのでしょうか。その最大の理由が、妊娠·出産における母体の状態や夫婦(カップル)の生活などが、生まれた子どもの健康状態に大きく影響するためです。

実際に満22週~生後1週未満の赤ちゃんの死亡事例の約35%が、母体の病態による影響だと言われています。もちろんすべてがそうではありませんが、妊娠前からの母体(またはパートナー)のリスク因子が赤ちゃんの健康に影響するのは事実です。

また、母体の状態やカップルの生活をチェック・改善することは、子どもを授かるチャンスを増やすことにも繋がります。不妊治療に取り組むカップルが増加しているからこそ、このような妊娠前からのケアが注目を集めているのです。

どんなことが母体のリスク因子になる?

  • 催奇形性のある感染症や薬剤の使用
  • 肥満や痩せ傾向
  • タバコ
  • アルコール
  • 糖尿病、甲状腺機能異常、高血圧症など妊娠前から継続する疾患
  • 葉酸の摂取不足
  • 過度なストレスなど

上記のとおり、出産·妊娠時における母体のリスク因子と考えられる要素はさまざま。「妊娠中には自己判断で薬を飲んではいけない」「アルコールやタバコは厳禁」などは漠然とイメージできていたとしても、体重(肥満や痩せすぎ)や過度なストレスなどが因子になるとは思わなかった……なんて方も多いのではないでしょうか。

糖尿病や高血圧など出産時のリスクになる疾患、不妊や不育に繋がる甲状腺疾患など、さまざまな病気はすぐに改善できるものではありません。子どもを授かるチャンスを増やすためにも、そして自分たちや将来の子ども(家族)が健やかに生きるためにも、妊娠する前からプレコンセプションケアが必要なのです。

未来の自分に向けて、プレコンセプションケアをしていこう

考え方や暮らしぶり、願い、夢は常に変化するもの。いつ、どんな選択をするのかは“そのときの自分”にしか分かりません。だからこそ妊娠を考えているカップルだけでなく、「まだ数年は子どもを考えていない」「結婚はもう少し先のことだから」という方にこそプレコンセプションケアを考えてほしいのです。3年先、5年先、10年先の自分がどんな決断をしてもいいように、早くから健康的な生活習慣を意識していきましょう。

自分の体、生活習慣を見直す「プレコンセプションケア」のチェック項目

では、実際にプレコンセプションケアではどのような項目をチェックしていくのでしょうか。チェック項目は、大きく「バランスの良い食事と運動により、適正な体重を維持」「慢性疾患の評価と改善」「定期的な健康診断の受診」「ライフスタイルの評価と改善」「禁煙とアルコール摂取を節制」の5つに分類されます。

食生活を確認し、適正な体重を維持

A.食事と栄養 B.やせ C.肥満 D.貧血 E.骨粗鬆症

肥満だけでなく、妊娠中に痩せすぎている(体重が増加しない)状態も早産や低体重児のリスクになります。実際に厚生労働省は、2019年に妊娠中の体重増加量の目安を改定し、従来よりも約3kg引き上げました。

適性体重を知る目安となる計算式が、「身長(m)×身長(m)×22」です。例えば、157cmの女性であれば約54kgとなります。妊娠中の体重増加曲線は、妊娠前のBMIによって異なります。上の計算式を参考に、今の体重が適正体重に近いのか、またはどのくらいかけ離れているのかを確認してみましょう。

慢性疾患の確認、改善

F.糖尿病 G.甲状腺機能障害 H.高血圧症 I.気管支喘息 J.腎臓病 K.膠原病・抗リン脂質抗体症候群

妊娠·出産時に、母体や子どもに影響を与える恐れのある疾患を確認します。なかでも若い世代の女性に多いのが甲状腺機能障害です。甲状腺ホルモンのバランスが悪いと不妊症や流産の原因になることもあるため、必要に応じて投薬や手術などの治療が必要となります。定期的に健康診断や人間ドックを受けるのはもちろん、少しでも異常を感じた場合は病院を受診するようにしましょう。

定期的な健康診断

L. 婦人科·子宮頸がん M. 乳房チェック N. ウイルス感染症

性感染症や女性特有のがんの有無などをチェックします。ウイルス感染症のなかでも、もっとも多い性行為感染症「クラミジア感染症」には要注意。進行すると、卵管癒着などが生じて不妊の原因になることもあります。20代女性の5人に1人が感染しているとも言われ、さらに自覚症状が出づらいことが特徴なので、早めにチェックしておいて損はないでしょう。

ライフスタイルの現状を確認し、改善

O. 基礎体温 P. こころ Q. 運動

精神面や運動習慣など、ライフスタイルを評価·改善していきます。運動は、健やかな暮らしを送るうえで非常に重要な要素です。体を動かすことで全身の血流がよくなると子宮や卵巣の血流の滞りも解消され、月経異常や女性不妊にも有効だと言われています。

タバコ、アルコール、薬剤などを節制

R. たばこ S. アルコール T. くすり U. パートナー

たばこやアルコール、持病の薬剤などを確認し、摂取量の節制を促します。持病があって薬を内服している方は、妊娠を考えた時点で医師へ相談しておくのが望ましいでしょう。妊活中や妊娠中、出産後(授乳中)にもその薬を継続できるのか、量のコントロールが必要であるのかを知っておくと安心ですよね。

カップルで話したい!自宅でできる男性用&女性用プレコン・チェックシート

今すぐでなくても、将来を考える2人であればチェックしておきたい「プレコンセプションケア」。すでにパートナーがいる場合には、女性だけでなく男性もプレコン·チェックシートに目を通してみてはいかがでしょうか。すぐにすべてを実行せずとも、頭に入れて少しずつチェック·改善していくだけでも大きな意味がありますよ。

女性用プレコン・チェックシート(国立成育医療研究センターホームページより)

  • 適正体重をキープしよう。
  • 禁煙する、受動喫煙を避ける。
  • アルコールを控える。
  • バランスの良い食事をこころがける。
  • 食事とサプリメントから「葉酸」を積極的に摂取しよう。
  • 毎週150分運動しよう。
  • こころも体も活発に。
  • ストレスをためこまない。
  • 感染症から自分を守る(風疹·B型/C型肝炎·性感染症など)。
  • ワクチン接種をしよう(風疹·インフルエンザなど)。
  • パートナーも一緒に健康管理をしよう。
  • 危険ドラッグを使用しない。
  • 有害な薬品を避ける。
  • 生活習慣病をチェックしよう(血圧·糖尿病·検尿など)。
  • がんのチェックをしよう(乳がん·子宮頸がんなど)。子宮頸がんワクチンを若いうちに打とう。
  • かかりつけの婦人科医をつくろう。
  • 持病と妊娠について知ろう(薬の内服についてなど)。
  • 家族の病気を知っておこう。
  • 歯のケアをしよう。
  • 計画:将来の妊娠·出産をライフプランとして考えてみよう。

男性用プレコン・チェックシート(国立成育医療研究センターホームページより)

  • バランスの良い食事をこころがけ、適正体重をキープしよう。
  • たばこや危険ドラッグ、過度の飲酒はやめよう。
  • ストレスをためこまない。
  • 生活習慣病やがんのチェックをしよう。
  • パートナーも一緒に健康管理をしよう。
  • 感染症から自分とパートナーを守る。(風疹·B型/C型肝炎·性感染症など)
  • ワクチン接種をしよう。(風疹·おたふくかぜ·インフルエンザなど)
  • 自分と家族の病気を知っておこう
  • 計画:将来の妊娠·出産やライフプランについてパートナーと一緒に考えてみよう。

20代カップルがプレコンセプションチェックを初体験!

今回は、実際に来年結婚を予定しているカップルがはじめてのプレコンセプションチェック(セルフ)にトライ! 先ほどご紹介したプレコン·チェックシートを参考に、将来に向けて今一度ライフスタイルや健康面を考えてみました。それぞれの感想を聞いてみましょう。

やってみた感想:女性側(薬剤師・26歳)

自分のこころとからだの状態を客観視できるので、ついスルーしてしまっていた体の不調やライフスタイルの悪い点(睡眠不足や運動不足)に気付くことができました。今回、改めて適体を調べたところ、理想とされる体重よりも約8kgも軽いと判明!痩せすぎもよくないと知ったので、今後は食生活の改善だけでなく、運動不足解消もかねて筋肉トレーニングに励もうと思います。

やってみた感想:男性側(会社員・26歳)

妊娠なんてまだまだ先の話だ、と思っていましたが、今回のプレコンセプションチェックを機に、“いつタイミングが来てもいいように備えておこう”という意識に変化しました。ライフプランを立てるうえでも役立ちますね。また数年前から潰瘍性大腸炎の治療を続けていることもあり、今回のセルフチェックの内容をふまえて、担当医師に妊活をはじめた場合の処方の有無(薬剤量の変更)についても確認してみました。「子どもに遺伝するのかな」「薬剤の影響は大丈夫かな」など、漠然と抱いていた不安をクリアにできたことも大きなメリットでしたね。

未来のために「プレコンセプションケア」を知ろう

厚生労働省も推進しており、今後も官民一体となった取り組みが予想される「プレコンセプションケア」。誰もが当たり前にプレコンセプションケアに触れる日も遠くないかもしれません。自分のライフスタイルや健康状態を改めて見直すことは、今だけでなくこの先より素敵な人生を送るためにも役立つでしょう。女性も、男性も、カップルも――ぜひプレコンセプションケアを考えてみてくださいね。

この記事の執筆協力

執筆者名

山本 杏奈

執筆者プロフィール

金融機関勤務を経て、フリーライター/編集者に転身。現在は企業パンフレットや商業誌の執筆・編集、採用ページのブランディング、ウェブ媒体のディレクションなど、幅広く担当している。

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