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2022年10月支給分から「児童手当」が変わる!対象外になる基準や自治体独自の支援制度

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中学校卒業までの子どもを養育している場合に支給される「児童手当」。これまでは所得制限を超えている場合でも5,000円が支給されていましたが、2022年6月からの新制度ではこの“基準”が大きく変更されました。では、どのような変更点が盛り込まれているのでしょうか。現行制度の内容や新制度の変更点、自治体による独自支援までをまとめていきます。

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コラムサマリ

1. 2022年10月支給分から「児童手当」が変わる
 1-1.そもそも「児童手当」とは?
 1-2.現行の児童手当、月額いくら?
 1-3.所得制限限度額と特例給付
2.2022年10月分からの変更点って?
 2-1.10月支給分から特例給付5,000円に所得制限
 2-2.「現況届」が原則提出不要に
3.今回の改正で児童手当対象外になるのは61万人!
4. 独自手当を支給する自治体も
 4-1. 所得制限なしで毎月1万円を支給|埼玉県上尾市
 4-2. 対象外となる家庭に毎月5,000円を支給|東京都千代田区
 4-3. 日本一子育て支援の手厚い街|兵庫県明石市
5.地域の子育て支援の取り組みを再度確認しよう

本文

2022年10月支給分から「児童手当」が変わる

子育て世代に衝撃的なニュースが流れたのは、2020年11月。翌年の2021年5月21日には高所得者世帯の児童手当を廃止する「改正児童手当関連法」が賛成多数で可決·成立しました。

そもそも「児童手当」ってなに?

「児童手当」とは、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方を対象に国から支給される手当のこと。毎年6月、10月、2月の年3回、それぞれの前月分までの手当(4か月分)が支給されます。ちなみに、現行制度は2022年6月に受け取る児童手当(2022年2月~5月分)まで適用となります。

現行の児童手当、月額いくら?

支給額は以下の通りです。

児童の年齢1人あたりの月額
3歳未満一律15,000円
3歳以上~小学校終了前10,000円
(第3子以降は15,000円)
中学生一律10,000円

ただし、養育者の所得が「所得制限限度額」以上の場合は、特例給付として月額5,000円が支給されます。これらを総じて「児童手当」と呼んでいます。

所得制限限度額と特例給付

現行の児童手当においても、家族構成や世帯主の年収による所得制限が設けられていました。例えば、年収103万円以下の配偶者と児童2人を扶養している場合には、所得制限限度額は736万円となります。この場合の目安年収額は960万円(所得額+給与所得控除額等相当分)です。

所得制限限度額を超える所得がある場合には、「特例給付」の対象となり、0歳から中学校卒業前の子ども1人につき月額一律5,000円が支給されます。

例えば、年収103万円以下の配偶者と児童2人を扶養している場合、年収が600万円だと上記の表の手当が支給され、年収が1,200万円だと5,000円の特別給付が支給されていました。

2022年10月分からの変更点って?

ライフプランにも大きく影響してくる、今回の「児童手当制度」の変更点。ご自身の家庭が対象となるのか、しっかりと確認しておきましょう。

変更点①10月支給分から特例給付5,000に所得制限

前述したように、現行の児童手当制度では所得制限限度額を超える家庭には、一律5,000円の特例給付が支給されています。つまりどれだけ所得が高くても、中学生以下の子どもを養育していれば子ども1人につき5,000円が支給されるわけです。しかし今回の制度改正により、年収1,200万円程度を超える場合には、特例給付の対象外となることが決定しました。
発案当初には夫婦の収入の合計額で計算される予定でしたが、夫婦のうち年収が高いほうの収入で計算することが正式に決定されています。こちらについては、のちほど表とともに参考例をご紹介します。                                                                                                                              

変更点②「現況届」が原則提出不要に

令和4年度分より、「現況届」の提出が原則不要となります。現況届とは、児童手当を引き続き受給する要件(児童の監督保護の有無、生計を同一にしているかなど)を満たしているのかを確認するため、毎年6月1日に書面で提出していたもの。自治体によって異なりますが、多くの場合郵送は不可となっており、開所日である平日に出向く必要がありました。
受給者の状況を公簿等(住民基本台帳等)で確認できる場合は、令和4年6月以降この現況届の提出が不要(省略)に。ただし、以下に該当する方は引き続き現況届の提出が必要です。

  • 離婚協議中で配偶者と別居している方。
  • 配偶者からのDV等を理由に住民登録地から避難し、別の市区町村で児童手当を受給している方。
  • 児童の戸籍がない方。
  • 法人による未成年後見人の方。
  • 施設(里親)等の受給者。
  • その他、市区町村から現況届の提出を依頼した方。

<実体験エピソード:愛媛県在住のMさん(30代・事務員)>

シングル家庭であることもあり、これまで平日に仕事を休んで市役所に行くのはかなりの負担でした。今回の改正で現況届提出が不要になったと聞いてホッ。改正には賛否あると思いますが、個人的には現況届の提出不要はかなり嬉しいポイントでした。

今回の改正で児童手当対象外になるのは61万人!

今回の児童手当改正により、受給対象から外れる子どもの数は約61万人と見込まれています。政府は、今回の一部廃止によって捻出される約370億円を待機児童対策にあて、令和6年度までに14万人分の保育施設を整備する予定とのことです。
これまでの変更点を確認し、「我が家は年収1,200万円を超えているから対象外になる……」と判断した家庭も少なくないのでは?しかし、年収1,200万円を超える世帯が一律に対象外になるのではありません。扶養親族の収入や子どもの数などによって「所得制限限度額」と「所得上限限度額」が異なるため、年収が1,200万円を超えても児童手当の対象となる場合もあります。下の表を参考に確認しておきましょう。

扶養親族等の数所得制限限度額
(限度額を超えた場合に、児童手当が一律5,000円になるボーダー)
所得上限限度額
(限度額を超えた場合に、児童手当が一切支給されなくなるボーダー)
所得制限限度額
(万円)
収入額の目安
(万円)
所得上限限度額
(万円)
収入額の目安
(万円)
0人
(前年末に児童が生まれていない場合 等)
622833.38581071
1人
(児童1人の場合 等)
660875.68961124
2人
(児童1人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等)
698917.89341162
3人
(児童2人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等)
7369609721200
4人
(児童3人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等)
774100210101238
5人
(児童4人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等)
812104010481276

(引用元/内閣府より)

つまり、児童を養育している方の所得が、上表の

  1. 未満の場合…児童手当(児童1人当たり月額10,000円または15,000円)
  2. 以上②未満の場合…特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)

②以上の場合…支給なし、となります。

【参考例】

■年収103万円以下の配偶者と児童2人の場合

  1. 養育者の年収が800万円の場合:児童手当の支給(金額は前述の表通り)
  2. 養育者の年収が1,000万円の場合:特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)
  3. 養育者の年収が13,000円の場合:なし

■夫婦共働きで児童3人(扶養親族は3人)

  1. 年収が夫800万円、妻700万円の場合:児童手当の支給(金額は前述の表通り)
  2. 年収が夫1,000万円、妻700万円の場合:特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)
  3. 年収が夫1,300万円、妻700万円の場合:なし

独自手当を支給する自治体も

児童手当改正による子育て世帯への影響を考慮し、一部の自治体では独自給付金を支給する動きも出てきています。その一例をご紹介します。

所得制限なしで毎月1万円を支給|埼玉県上尾市

埼玉県上尾市では、新型コロナウィルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し「子育て世帯へのげんき応援給付金給付事業」を立ち上げました。こちらは所得制限なしで、18歳の年度末までの児童に毎月10,000円を支給するものです。児童手当支給世帯は申請不要で、高校生以上の児童のみを養育する世帯や公務員のみが要申請となります。

対象外となる家庭に毎月5,000円を支給|東京都千代田区

年収の高い世帯が多い東京都千代田区では、児童手当受給者の4割が受け取れなくなる見込みです。そこで区は所得制限のために児童手当を受け取れなくなった世帯に対し、中学生までの子ども1人につき5,000円を支給する独自制度を設けました。

日本一子育て支援の手厚い街|兵庫県明石市

メディアでもたびたび取り上げられる兵庫県明石市では、①子どもの医療費無償、②第二子以降の保育料の無償化、③0歳児の見守り訪問(おむつの定期配送、ベビー用品カタログの配布など)、④中学校給食の無償化、⑤公共施設の入場料無料化などを所得制限なしで実施しています。“子育て支援の5つの無料化”をはかりながら子育て世帯を応援する姿勢は、全国から支持されています。

地域の子育て支援の取り組みを再度確認しよう


「児童手当制度」改正の影響を受けて、お住まいの地域でも子育て世帯への独自支援の動きがみられているかもしれません。対象の年齢や所得額が変更されていたり、申請が必要な可能性もあるため、見逃しているものがないかを改めてチェックしておきましょう。

この記事の執筆協力

執筆者名

山本 杏奈

執筆者プロフィール

金融機関勤務を経て、フリーライター/編集者に転身。現在は企業パンフレットや商業誌の執筆・編集、採用ページのブランディング、ウェブ媒体のディレクションなど、幅広く担当している。

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