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老人ホームの費用が払えないとどうなる?対処策を専門家が解説
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「老人ホームの費用が支払えなくなったら、どうなるの?」「対処策や予防策としてできることは何?」
親や自分の老後資金について不安を抱えている人は、老人ホームにかかる費用が足りなくなった場合にどうなるか、心配でしょう。この記事では、介護福祉士・小林隆雄さん監修のもと、介護初心者や老後の資金づくりに悩む人に向けて、老人ホームの費用が支払えなくなった場合の対処策について説明します。
※この記事では、民間施設は「入居」、公的施設は「入所」、両方をまとめて表現 する場合には「入居」と表現しています。
- コラムサマリ
■老人ホームの費用を支払えないと、どうなる?
■老人ホームにかかる費用の相場は?
■老人ホームの費用を支払えなくなったら、まずやること
■金銭面での対処策①減免・助成制度などを利用する高額介護サービス費
高額医療・高額介護合算療養費制度
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定証)
税金の控除
■金銭面での対処策②住宅に関する制度を利用する
■金銭面での対処策③より費用がかからない施設に移る
■もしもに備えて資金は多めに用意しておこう
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老人ホームの費用を支払えないと、どうなる?
老人ホームの費用を支払えなくなった場合、契約内容にもよりますが、基本的には退去を求められることになります。支払い滞納から即時退去になるわけではなく、数カ月の猶予はあります。その期間中に支払えなかった場合、身元引受人(連帯保証人)に請求がまわります。
身元引受人に請求金額を支払ってもらったとしても、以降も支払いは発生します。継続的な解決策を見つけられない限りは、やはり退去することになるでしょう。
老人ホームにかかる費用の相場は?
老人ホームにかかる費用は、基本的に入居の際に支払う「入居一時金(保証金)」 と「月額費用」の2種類です。「月額費用」は月々支払う利用料で、滞納の可能 性があるのはこちらでしょう。以下が老人ホームとよばれる各施設の月額費用の相場です。
〈表〉老人ホームの月額費用の相場1)2)3)
施設の種類 月額費用の相場 グループホーム 9万6,000 円~14万6,000万円 介護有料付き老人ホーム 16万8,000円~35万4,000円 住宅型有料老人ホーム 10万円~24万6,000円 サービス付き高齢者向け住宅 12万5,000 円~23万5,000円 介護型ケアハウス 9万円~15万円 特別養護老人ホーム 7万501円~11万6,065円 「入居一時金」は賃貸住宅の敷金にあたり、施設によっては退去時に返却されます。ただし、月額費用を滞納した場合にはその充填に使用されます。
参考資料
1)みんなの介護「有料老人ホーム・サ高住・グループホームの費用相場調査(2023年3月時点)」
2)厚生労働省「令和2年8月3日 第1回 住まい支援の連携強化のための連絡協議会 資料10」
3)独立行政法人福祉医療機構「令和元年度 施設・居住系サービス事業者 運営状況調査報告書」
老人ホームの費用を支払えなくなったら、まずやること
老人ホームの費用が支払えなくなった時には、まず施設の職員やケアマネジャーに相談しましょう。生活保護を受けることができ、その金額で月額費用を支払える場合には手続きをします。年金や預貯金を使っても難しい場合は、生活保護 の指定介護機関である施設など、生活保護での支払いが可能な老人ホームに転居するのが一手です。
金銭面での対処策①減免・助成制度などを利用する
まずは月額費用をできる限り軽減することを試みましょう。役立つ制度について説明します。
・高額介護サービス費を活用
・高額医療・高額介護合算制度
・特定入所者介護サービス費(負担限度額認定証)
・税金の控除
高額介護サービス費
高額介護サービス費4)とは、月々の介護サービス費の自己負担額が世帯合計または個人で上限額を超えた場合に、その超えた金額を受給することで自己負担が軽減される制度です。所得区分によって上限額は異なります。
〈表〉高額介護サービス費の区分と上限額
サービス利用費が上限額を上回った場合、該当者には自治体から「高額介護(介護予防)サービス費支給申請書」が送られてきます。一度申請を行えば、その後は申請をしなくても上限額を超えた場合には超過分が指定口座に自動的に振り込まれます。
参考資料
4)厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度5) とは、世帯内の同じ医療保険制度の被保険者全員が1年間(毎年8月~翌年7月末)に支払った医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準値を超えた場合に超えた分を払い戻される制度です。自己負担限度額は、年額56万円(70歳以上の場合)を基本とし、医療保険各制度や所得、年齢区分で設定されています。
基本的には基準値を超えた場合、自治体から申請書が送られてくるので、必要事項を記入した上で窓口あるいは郵送で申請しましょう。自治体によっては、医療機関の領収書や健康保険証が必要になる場合もあります。
参考資料
5)厚生労働省保険局「高額介護合算療養費制度について」
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定証)
特定入所者介護サービス費6)とは、介護保険施設に入所している人などで、所得や資産が一定以下の人に対して、食費や居住費の一部を補助する制度です。介護保険施設とは、介護保険サービスを利用できる公的な入所施設のことで、具体的には「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護医療院」の3つを指します。特定入所者介護サービス費の利用にあたっては、市区町村に申請して負担限度額認定を受ける必要があります。
参考資料
6)厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護保険の解説サービスにかかる利用料」
税金の控除
介護保険サービスを利用して支払った費用は、医療費控除の対象となる場合があります7)8)。施設サービスの場合は、介護費、食費および居住費に関わる自己負担額(日常生活費や特別なサービスの費用は除く)の全額または半分が対象となります。ただし、介護付き有料老人ホームなどで利用した特定施設入居者生 活介護費やグループホームでの介護サービス費は対象外となります。
また、居宅サービスの場合は医療や看護に関わるサービスなどの自己負担額は医療費控除の対象となります。忘れずに確定申告をすることで、負担を軽減しましょう。
参考資料
7)国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」
8)国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」
金銭面での対処策②住宅に関する制度を利用する
マンションや戸建てなどの住宅を所有している場合、それらを利用してまとまったお金を工面したり、定期的に一定額を受け取ったりすることもできます。 マイホーム借上げ制度9)は、住宅の所有者が一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)に住宅を貸し出し、入居者に転貸する制度です。原則として日本に居住する50歳以上の人、あるいは海外に居住する50歳以上の日本人とその共 同生活者(1名まで)を対象にしています。亡くなるまでの「終身型」と、期間 を区切る「期間指定型」の2タイプがあります。
制度を利用するための条件は、原則、ローンを完済した住宅であることと、新耐震基準を満たしていることなどです。空き室が生じても、規定の賃料が支払われるのが最大の利点です。ただし、賃料は不動産会社を仲介するよりも低い傾向にあり、値下げの可能性もあることを覚えておきましょう。
参考資料
9)一般社団法人移住・住みかえ支援機構「マイホーム借上げ制度 ご利用ガイド」
金銭面での対処策③より費用がかからない施設に移る
まとまった資金の準備や定期的な入金が難しい場合、支払える金額の施設に移るのが現実的です。立地やアクセスに難がある施設や多床室のある施設などは費用が比較的安い傾向にあります。施設の職員やケアマネジャー、自治体の担当者などに相談してみましょう。
もしもに備えて資金は多めに用意しておこう
人生100年時代を迎え、予想以上に入居期間が長期にわたり預貯金が底をつい てしまうということも考えられます。また、高齢者を経済的にサポートしてくれていた家族が援助できなくなるというケースも少なくありません。そうした場合には年金や生活保護などでまかなえる施設に移るのが現実的な解決策です。突発的な移動を避けるためにも、余裕をもって資金を用意しつつ、入居期間が長期になっても無理せず支払える施設を選びましょう。
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